起業のまえ
ぼくはIT業界で働いていた2008年に過労によってうつ病になりました。
人と会話することが怖くてコンビニにも行けないし、電車では吐くし、なにもせずに空気を吸って吐くだけでも苦しく感じました。
アルコールを飲んでいるときだけ昔の自分に戻れた気がしましたが、うつ病からアルコール中毒へは一直線らしいので、禁酒しました。
会社では廃人と呼ばれながらも、社内政治のせいで残業もなくならず。
やっと休職できたときは、ひたすら眠り続けていたので、あの年の夏がどんなだったのか記憶がほとんどありません。
すこし回復した時期もありましたが、再発により働けなくなって1年半ニートをしていました。
症状が落ちついてきて周りを見渡せば、親類、かつての同僚、友人たち、友人の友人、みなあまりにうつ病によって大変な思いをしていました。
うつ病はIT産業特有の問題かとも思っていたのですが、日本全体に広がる巨大な問題でした。
だれかが、状況を変えなくては。
自分は医療やカウンセリングの専門家ではないけれども、IT業界に身を置いた経験を活かしたアプローチで今までにないことができるかも知れない。
そう思いました。
起業へ
「うつ病の人にWEBで認知行動療法を提供する」という事業計画書を作ってスカイライトコンサルティング主催のビジネスプランコンテストに応募しました。
通常の認知行動療法のカウンセリングでは1人の当事者と1人のセラピストをベースとしていますが、この形ではすこし高めの価格やセラピストの希少性から、受けにくい。
そこでフレームとなるプログラムを用意した上で、複数の当事者と複数のセラピストをつないでいく。
移動やクリニックを探す労力を減らし、低価格で認知行動療法を提供するというプランでした。
結果は優勝。
300万円の起業資金を獲得しました。
仲間がふえる
応募したときはニートを脱した先のアルバイトですら、休みすぎて首になりそうで、体調もメンタルもフラフラで、コンテストを主催している会社に打ち合わせに行くのもつらく、おまけに道ばたで意識を失ったりとひどい状況でした。
それでも続けられたのは、起業しようと心に決めてから、会う人がみんないい人だったからです。
なんだかもの凄い専門家が協力してくれることになったし、社内の同僚達は応援してくれたし、とあるブロガーは意見をくれたし、出版社の社長さんはなんの実績もないぼくたちに本をつくらせてくれると言ってくれました。
Twitterやブログを通じて、プログラマやデザイナーの方々が仲間に加わってくれました。
たくさんの人たちの協力によってU2plusは生まれました。
U2plusの方向性
インターネット上では多くのうつ病当事者の方がいますが、多くのサイトでは「つらいこと」「苦しいこと」にひっぱられる傾向がないでしょうか。
その価値は認めつつも、よりポジティブな方向へのコミュニケーションを取れる場所がひとつはあっていいと思うのです。
U2plusを利用している方同士でプログラムの利用の仕方を参照し合い、お互いの書き込みに対して「よくわかるよ」「それはとてもいいことだよね」とポジティブなコミニュケーションをつないでいきます。
楽しいことを増やし、つらいことを分かち合う。
いちばん大切な「回復したい」という本人の意志を増幅させる場所にしていきたいと考えています。
東藤泰宏
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