認知行動療法は、いま日本だけではなく、イギリスやアメリカなどの医療先進国で「うつ病といえば認知行動療法!」と言われるほど、うつ病治療のために最も多く選ばれている心理療法です。認知行動療法の効果は医学的に証明されていて、抗うつ薬と同じかそれ以上の効果があるといわれています。
では、認知行動療法とは具体的にどんなことをするセラピーなのでしょうか。
認知行動療法の「認知」とは、「考え方」や「事実の捉え方」のことです。
認知行動療法は、「考え方」のバリエーションを増やし、ネガティブな考えや行動のパターンを変えていくお手伝いをする心理療法なのです。
たとえば、次の例をみてみましょう。
■あなたはある日、婚約していた恋人にフラれてしまいました。

これはとてもショックな出来事です。
頭にどんな「考え方」が頭に浮かぶでしょうか。
考え方:「もう一生ひとりぼっちだ」「もう誰とも結婚できない」「もう生きていく意味がない」
と、考えてしまうかもしれません。
恋人と別れることは、誰にとっても辛いことのはずですが、もともとうつ病状態であれば、なおさら事実をネガティブにとらえてしまいがちです。
そして、このような「考え方」を抱きつづけると、気分はどんどん落ち込み、大きな絶望感に長く悩まされることでしょう。
そこで認知行動療法は、同じ状況に対して別の見方を探すお手伝いをします。少しでも、「考え方」を柔らかくし、物事を色々な角度から捉えられるようになることを目指すのです。

もし、フラれて落ち込んでいる自分を冷静に眺めた結果、次のような考え方を抱くことが出来たら、気分はどのように変わるでしょうか。
考え方:「そういえば、彼女とは性格の合わないところがたくさんあった」「別れは出会いの始まりというから、これからもっと良い人が見つかるかもしれない」

このように、他の考えを見つけることができると、さきほどまで抱いていた絶望感も小さくなるでしょう。
他の角度から眺めることが難しいとき、認知行動療法のセラピストは「他の考え方」を探せるようにサポートします。
同じ出来事でも、「考え方」が変わると「気分」も変わることが、なんとなくおわかりいただけたでしょうか。認知行動療法は、こうして「認知(考え方)」のバリエーションを増やすことで、いつもの悪循環を良い循環に変化させていく心理療法です。
